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活用事例

平成27年度第4回JASDIフォーラム

病棟薬剤業務に必要な医薬品情報とは何か-DI担当者と病棟薬剤師の連携-

日本医薬品情報学会(JASDI)が2016年2月14日、「病棟薬剤業務に必要な医薬品情報とは何か-DI担当者と病棟薬剤師の連携-」をテーマに平成27年度第4回JASDIフォーラムを東京大学・鉄門記念講堂で開催した。JASDIは「医薬品情報学に関する教育・研究の向上及びその応用並びに国内外の相互交流により薬学及び医学、医療の進歩向上、国民の健康に貢献すること」を目的に活動している組織。医療現場で働く方、大学関係者、製薬や医薬品流通関連企業の方、行政担当者など、医薬品情報学に関心をもつ様々な立場の人が会員であることを特徴としている。

活動の一環であるJASDIフォーラムは年4回開催されている。今回のフォーラムでは、JUS D.I.を導入・運用している3病院のDI担当薬剤師が、糖尿病、感染症、緩和のそれぞれの領域で求められる医薬品情報について講演した。

臨床現場の病棟薬剤師の情報とDI 担当の情報連携・融合を実践

最初に登壇した草加市立病院 薬剤部医薬品情報管理室の木村好伸氏は、糖尿病領域に求められる医薬品情報について発表。システムを活用した情報支援の取り組みや糖尿病領域での情報共有・連携の取り組み、情報提供における注意点などについて述べた。

草加市立病院の薬剤部は、調剤業務や医薬品情報管理などを行うセントラル薬局と、薬剤管理指導・病棟薬剤業務を担うサテライト薬局を設置している。サテライト薬局には、医師・コメディカルとのコミュニケーション増加や質の高い薬物療法への貢献ができるという利点がある反面、情報資源の不足、薬剤部員間のコミュニケーションの減少、病棟独自の運用が発生するなどの欠点があることを指摘。その課題解決の1つとして、ITツールを活用した情報資源・環境整備を行っていることを説明した。

具体的には院内ネットワークを利用し、Q&AデータベースのWeb公開や共有フォルダによる情報共有の環境を整備している。「従来、紙媒体だった情報を、FileMakerを利用してQ"Aデータベースを構築・Web公開したり、共有フォルダを利用して院内の電子カルテ端末から参照できるようにしている。”システム構築は簡単に”を基本姿勢とし、メンテナンスや後任への引き継ぎのしやすさ重視といったところがテーマになっている」(木村氏)という。

草加市立病院の木村 好伸 氏

草加市立病院 木村 好伸 氏

また、添付文書を参照したいというニーズが医師やサテライト薬局の薬剤師からあるため、JUS D.I.を利用している。「このシステムを評価している点は、添付文書の更新頻度が高く最新の添付文書情報が見られること、電子カルテと連動して利用できること。さらに、付加情報を自分たちで追加できることが大きな利点」(木村氏)。付加情報の具体例として、薬剤粉砕の可否や簡易懸濁の可否などの情報を追加したり、タブレット端末でインターネットに接続して外部の情報サイトから情報収集するためにQRコードを付加したりといったことを挙げた。

こうしたITツールの支援により、これまでDI担当薬剤師だけで回していた収集・評価・加工・提供・蓄積という情報のライフサイクルに、病棟薬剤師の臨床的な情報サイクルが加わり、DI担当薬剤師と病棟薬剤師との情報連携ができるようになったと強調した。

糖尿病領域における情報共有・連携での取り組みとして低血糖対策について述べた。取り組みの一端は、低血糖対策指導の院内統一化。代表的な症状を列挙し、(1)砂糖10g、もしくはブドウ糖1包(10g)摂取、(2)症状がとれなければ、もう一度糖分を同量摂取、(3)それでも改善しない場合は病院を受診、というようにより具体的に対処方法を取り決め、情報共有を図った。

また、SGLT2阻害薬の適正使用への取り組みとして、昨年秋に発表された大規模臨床試験、EMPA-REG OUTCOMEにおける評価、あるいは同薬の適正使用に関するリコメンデーションなどの情報を病棟薬剤師との間で共有し、服薬指導、副作用への介入、糖尿病非専門医への積極的な情報提供に活かしたという。

最後に木村氏は、DI担当は後方支援と称されることを例示し、「病棟薬剤師というのは、現場のニーズに対して先手を打つことができる。これにDI担当ならではの情報支援が加わることで、前線を押し上げる役割を担うことができる」と、DI担当薬剤師の位置付けを述べた。


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抗菌薬選択と原因菌特定後の支援でDI担当が病棟と連携

横浜総合病院 薬剤科の佐村優氏は、感染症領域で求められる医薬品情報をテーマに、病棟薬剤師が病棟で活躍できるためにDI薬剤師がどのような情報を提供すべきか述べた。

同病院では、重症感染症者に対して、より薬剤師がかかわってほしいという院長の依頼から、2012年度より血液培養やカテーテル先端培養の中間報告を薬剤科でも確認し、それを病棟薬剤師や医師を含めて抗菌薬を検討している。また、病棟薬剤師や医師からの相談体制を設けて、できるだけ早期に感染症対策支援を実施することに取り組んでいる。「DI担当の立場として、個人のばらつきをなくすため抗菌化学療法の用法用量の標準化を目的に、各資料を併記しつつ最終的に選択できるような支援体制をとっている。それらの情報は院内ネットワークで参照できる環境を整備している」と、取り組みの一端を述べた。

感染症領域での適正な薬物治療として、最初に抗菌薬の選択プロセスを説明。佐村氏は、(1)現病歴や既往歴、特に重要な点として重症度や過去の抗菌薬の使用歴など、患者背景の理解、(2)どの臓器が感染しているか、(3)原因と考えられる微生物は何か、これら3つを総合的に考えて最適な抗菌薬の選択することが重要だと指摘。「当院ではDI担当として感染症治療を支援する際に、必ず病棟薬剤師とこれらの点を考慮しながら抗菌薬の選択を行っている」(佐村氏)とした。

横浜総合病院の佐村 優 氏

横浜総合病院 佐村 優 氏

さらに医薬品情報としては、病棟でよく使われる添付文書やインタビューフォーム、あるいはガイドラインなどだとし、「DI担当がフォローする際には、さらに承認時の情報や原著論文などの大元の情報や海外の情報などを盛り込みながら、できるだけ添付文書の不足情報を補いながら個々の症例への適用を実施している」(佐村氏)と述べた。

続いて、感染症の具体的な症例を挙げながら薬剤部の対応を紹介しつつ、効果判定・原因菌同定後の支援について説明した。「感染症領域は、使用後の効果判定も非常に重要。例えば、心内膜炎とかブドウ球菌の菌血症、カンジダ血症では血培陰性化が重要なので、こうした点を病棟担当薬剤師と検討している」(佐村氏)。また、適正な使用を段階的に縮小するDe-escalationでは、必ず原因菌が特定できている、あるいは複数の感染症がないことを前提にDI担当者と病棟薬剤師が一緒に考えながら実施している。「合併症の有無に関しても、抗菌薬の投与期間に大きく影響するような背景であるため、病棟薬剤師、主治医と相談しながら、確認するといったことを実践している」(佐村氏)という。

発表のまとめとして佐村氏は、「感染症領域だけではないが、薬剤師が病棟で活躍するために、1つの医薬品の知識を深め、それをどう臨床に応用するかが重要。当院では薬物動態や臨床試験の情報を汲みながら質を高めることに努めている」と述べた。また、承認時の情報や上市されるときの限界点を知った上で対応すること。その上で添付文書、ガイドラインの根拠、限界点を理解して活用することを目標としていると強調。

「感染症領域では患者さん情報の評価が非常に重要になるので、重症度などを含めながら抗菌薬の選択等を推奨している。その上で患者さんに適切な薬物治療を医師とともに考える。さらに投与後の経過を医師・看護師とともにモニタリングすることによって、実践していることの精度が上がると考えている」(佐村氏)とし、病棟薬剤師とDI担当が連携しながら医薬品情報を使用していると述べた。


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新薬導入プロセスでDI薬剤師と病棟薬剤師が密接に連携

緩和領域で求められる医薬品情報について講演した亀田総合病院 薬剤部DI科の川名真理子氏は、DI薬剤師と病棟薬剤師連携のアプローチ、緩和領域における医薬品評価・採用後モニタリングでの連携事例、在宅医療での緩和ケアについて述べた。

同院の薬剤部のDI科薬剤師と薬剤管理指導科薬剤師の連携・情報共有には、100人程度が参加する朝礼に加え、Office365を活用して薬剤部用サイトで共有したい情報を掲載している。DI科が毎日入手した情報は日付ごとにフォルダを作り、PDFファイルで保存・共有。DI科から伝達したい運用、品薄に対する対応などの情報は別途お知らせを作成し、毎日DI科のお知らせとしてフォルダに格納。「薬剤部員は毎日、共有フォルダを必ず見ることにしているので、朝礼以外の情報共有の仕組みとして利用している」(川名氏)。また、DI科が保管している各薬剤の医薬品情報は、医薬品ごとに作成したフォルダにPDFファイルで格納し、病棟にある端末から参照できるよう整備している。また、薬剤部に問い合わせのあったQ&A情報も一元管理されている。「DI科に限らず、薬剤部のすべての科に問い合わせがあった内容すべてを、フォーマットを決めて入力・閲覧できるようにしている」(川名氏)という。

亀田総合病院の川名 真理子 氏

亀田総合病院 川名 真理子 氏

緩和領域におけるDI薬剤師と病棟薬剤師の連携では、フェンタニルバッカル錠の医薬品評価から採用後のモニタリングまでを例に説明した。同病院では新薬を評価する場合に、製造販売承認がされた段階で添付文書、インタビューフォーム、審議結果報告などの基本情報を入手し、製薬会社からヒヤリングを行う。それらを医薬品評価としてDI薬剤師がまとめ、プロファイル最終決定会議でDI室が作成した資料の最終コンセンサスを得る。この医薬品評価資料を基に薬事委員会で検討し、採用を決定する。採用決定を受けて患者説明用ツールなどの準備を行い、その周知のための情報公開を実施する。また、処方開始後は採用後のモニタリング、評価を経て薬事委員会に報告する。

これらのプロセスの繰り返しが、新薬評価・情報提供の流れだ。このプロセスを、フェンタニルバッカル錠の導入事例で具体的に説明した。採用決定後の情報提供においては、まず薬剤師向けには採用したイーフェンバッカル錠の説明会を開催し、薬剤師必須研修会と位置付けた。「説明会では、薬剤師自身が製剤見本を用いて正しい手技指導・確認も行い、合格者を服薬指導実施許可とした」(川名氏)。

一方、医師への情報提供は、服薬指導実施許可となった診療科担当薬剤師が、DI科薬剤師が作成した資料を基に各診療科へ情報提供を実施。特に関連の深い診療科には診療科担当薬剤師とDI科薬剤師がカンファレンスに参加して、プレゼンテーションを行い情報提供した。また、看護師向けの情報提供では、DI科薬剤師が看護師長会で医薬品情報、安全対策の概略などを説明。加えて、「イーフェンバッカル錠投与開始時は薬剤師が服薬指導します。不明な点は、細かなことでも薬剤師にお尋ねください、と説明している」(川名氏)と説明した。

院内全体への情報提供では、薬事委員会の審議結果報告として、医薬品情報や安全対策を記載した案内を作成し、Office365の亀田サイトで掲示する。また、「医薬品情報一元管理システム「JUS D.I.」のお知らせのページを活用して、薬事委員会の審議結果を掲載。それとともに、イーフェンバッカル錠の運用として添付ファイルを付け、そちらで安全対策を見られるようにしている」(川名氏)。さらに、同じ医薬品情報管理システムを活用して、イーフェンバッカル錠の添付文書が見られるページに、院内の取り決め情報として安全対策を載せている。これらの情報は電子カルテ画面からすべてが見られるようになっている。

最後に川名氏は、医薬品情報担当薬剤師は、情報の発信・管理部署として院内の状況に応じて細かな配慮と、病棟担当薬剤師や関連部署と連携することで、より安全な薬物療法の実施・治療の標準化が可能になると指摘。「これに加えて、緩和医療の視点では、自宅や地域での療養を希望する患者さんがスムーズに療養の場の移行ができるよう、地域の入院医療機関や在宅医療機関、保険薬局とも連携する必要がある」とし、地域包括ケアシステムの一端を担う医薬品情報室になれるよう務めていくと抱負を述べた。

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