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活用事例

市立砺波総合病院

紙媒体の薬事速報とDIシステムを組み合わせ独自の運用

「砺波医療圏の中核病院として安全で質の高い病院」を目指す市立砺波総合病院では、医薬品の効能・効果や用法・用量などの改訂情報を、毎週定期的に薬剤科が発行する「薬事ニュース」に掲載して、院内に周知している。これと連携させる形で、2005年5月に導入した電子カルテシステムに医薬品情報統合システム「JUS D.I.」を組み込んだ。変更・追加のあった医薬品をはじめ、院内製剤の詳しい情報や院外採用薬、未採用薬などの添付文書について、発行日の翌日からすぐに院内のイントラネットに接続される約750台のパソコン(PC)から必要に応じて検索・印刷できる仕組みが整備されている。

院内採用薬以外の情報も電子カルテ上で検索したいとの要望

2005年5月、市立砺波総合病院では、従来のオーダリングシステムをベースに、新たに電子カルテシステムを構築した。その際、約750台のノートブックおよびデスクトップ型のPCを院内配備。84名の医師が詰める診察室や514の病床、薬剤科から、有線LAN及び無線LAN経由でイントラネットに接続できるようにし、外来および入院の両方でさまざまな情報を現場の職員に提供する院内情報インフラに刷新した。

「現場のニーズを受けて優先順位をつけて情報化投資に力を入れている」と言う雄川氏「現場のニーズを受けて優先順位をつけて情報化投資に力を入れている」と言う雄川氏

「現場のニーズを受けて、優先順位をつけて情報化投資に力を入れている」と述べるのは、同院情報システム室情報システム係主事の雄川孝治氏だ。

その観点から、DI検索システムについても、MEDIS-DC(JAMESデータ)から、新たに医薬品情報統合システムJUS D.I.に更改した。

今回、JUS D.I.を導入するまでの課題について、医療技術部薬剤科主幹の高畑英信氏は次のように説明する。

「システムの利用者である医師や看護師などからは、従来は院内採用薬のみの情報しか得られないことに不満が高かった。院外採用薬や未採用薬についての情報は、毎年更新される分厚い医薬品集を使って調べるしかなかった」。

「たとえば、抗血小板薬など、術前の一時休薬しなければならない薬を薬剤科に伝える際に看護師も、それらの情報を把握しておきたい。医療の安全性を高めるためだ。しかし、院外採用薬や未採用薬について詳しく知りたい場合や添付文書を閲覧したい場合は、薬剤科にそのつど問い合わせるという手間がかかった」(高畑氏)。

添付文書も印刷し、手渡すまでに時間もかかる。目を通す医師や看護師も時にたくさんのページをめくらなくてはならなかった。

DI業務を提供する薬剤科でも、仕事の効率化を検討していた。「大切なことは、重要な情報をいかに的確に医師や看護師に伝達するか、ということ。製薬会社のMRは、山のように情報を持ってくる。それらは多種多様で、添付文書の効能・効果の欄に一行『下痢』が加わった、というレベルから、誤飲すると生死にかかわるような緊急性の高い情報までが、そのなかに含まれている。それらの情報を取捨選択し、院内の関係者に優先度の高い順に的確に伝えるか、情報を交通整理するDI室の任務」だと高畑氏は語る。

「大切なことは、重要な情報をいかに的確に医師や看護師に伝達するか」という高畑氏「大切なことは、重要な情報をいかに的確に医師や看護師に伝達するか」という高畑氏

そのミッションを果たすために、毎週火曜日に、薬剤科DI係が定期発行しているのが「薬事ニュース(DIニュース)」である。1ページ目冒頭の「今週の話題」欄には、薬剤の効能・効果や用法・用量、副作用などに関して追加や変更があった薬剤の情報がトピックとして簡潔に取り上げられている。

個々の医薬品についての詳しい情報はそれ以降にまとめられ、医師は必要に応じてその箇所に目を通せばすぐに分かる誌面構成が編集方針となっている。すでに今年2007年中には700号を突破するペースで発行。同病院では10年以上にわたって、医師・看護師らと薬剤科を結ぶ情報媒体=メディアとして浸透している。

「JUS D.I.の導入以前は、改訂のあった医薬品の添付文書も一緒に綴じ込んでいたため、どうしても分厚くなりがちだった。そうすると、多忙な医師に読んでもらえないこともある。これでは情報媒体として機能しない。そこで、情報を必要な医師らに負担をかけずに提供できないかと思案していた」(高畑氏)。


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鮮度が落ちれば情報ではない、更新頻度が採否の決め手

「薬剤科および情報システム室では、8社が市販するDIシステムのパッケージ製品を多角的に比較検討した。選定の際に重視したのは、使い勝手のよさと、情報がタイムリーに得られること。自動更新の頻度が採用の成否における決め手になった」(高畑氏)。

「JUS D.I.以外の他社製品は、いずれも月1回の更新頻度だった。これでは、月1回のデータ更新日の翌日に、新たな情報が加わってしまう場合、それを見るのにさらに1カ月近く待たなくてはならない。鮮度が落ちてはもはや情報とはいえない」(同氏)。

システムの導入にあたっては、利用者の声を反映した。薬剤の組成や販売名、重大な副作用や禁忌項目、効能・効果の情報は必ずすぐに見られるようにした。さらに詳しく知りたいと思えば、添付文書は画面上にすぐに呼び出せる。利用者の求める情報をタイミング良く提供する仕組みができた。


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持参薬も画面上で患者と確認でき、対応が適切になった

「レセプトの時期だと適用病名をつけなければいけない。医薬品を調べるときに重宝している」と言う伊東氏 「レセプトの時期だと適用病名をつけなければいけない。医薬品を調べるときに重宝している」と言う伊東氏

今回、同院が販売元のスズケンに対して出した要望がある。それは、院内製剤のDIとJUS D.I.との連携だった。最新バージョンのJUS D.I.にはすでに実装済みだが、同院では本採用、仮採用、緊急採用などと同列に、院内製剤をJUS D.I.の画面からも、HIS側からの薬剤情報表示の表示画面からも、双方で表示できるようにしたのだ。こうして生まれたのが、同院独自の検索システム(以下、新DIシステム)である。

「院内製剤の成分や用法・用量が専門外の先生でもわかるようになった。たとえば手術で内服薬を飲めない場合に、坐剤をいくつ使用すればいいか……、などが検索でわかるようになった」(高畑氏)。

新DIシステムに対する医師や看護師ら利用者の反響も大きかった。利用実態と問題点を抽出したDI検索に関するアンケート調査結果にそのことが表れている(アンケート回収率48%)。

調査結果によると、「医薬品の情報を得る方法」はDIシステムがいちばん多く71%を占め、新DIシステムは92%の医師が利用していた。

「レセプトの時期だと適用病名をつけなければいけない。たとえば内科の医師はなぜこの薬を使ったのだろうか、といった場合に医薬品を調べるときに重宝している」と述べるのは、脳神経外科部長の伊東正太郎氏だ。

JUS D.I.の一画面。医薬品が画像で表示されるので医師や看護師には重宝されている JUS D.I.の一画面。医薬品が画像で表示されるので医師や看護師には重宝されている

「薬剤科においても、添付文書をほしいなど薬の問い合わせに対する仕事の量は、新DIシステム導入前と比べて減った」(高畑氏)。添付文書も画面上で閲覧できるので、紙の出力量が減り、ペーパーレス化が進んだ。印刷したい場合も、デスクトップPCに付属のプリンタを使えばその場ですぐに出力できるので待たされない。

さらに、その後のJUS D.I.のバージョンアップによって、持参薬管理表/鑑別報告書作成機能が新たに加わった。

「患者に『2年前に処方された桃色っぽい色の錠剤がよく効いたのだけど』と言われると、ロキソニンかポンタールかな、と察しがつく。そこで、販売名などで検索すると、剤型も一緒に見られる。JUS D.I.はあらかじめ剤型を登録しておけば、画面上で患者と一緒に確認できるので話が早い」(伊東氏)。

数百ページもある医薬品集を患者の前でめくらずによくなっただけでも、患者から医師に対する心証が良くなり、信頼してもらえるという。

「薬価も表示されるので、価格が適正であることを患者に伝えることができる」(伊東氏)。


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氾濫する改訂情報を適切にコントロールするのが薬剤科の役目

同院では、JUS D.I.を、毎週火曜日に定期的に発行する薬事ニュース(写真右下)を補完する形でシステムに組み込んでいる。それによって、薬事ニュースそのものは、重要な更新情報だけをダイジェスト的にコンパクトに詰め込むことができるようになり、総ページ数も削減できた。

JUS D.I.の情報はセキュリティを考慮し、毎週月曜日にまとめてダウンロードし、ウイルス感染のないことを確認した上で、そのデータをオフライン経由でファイルサーバーに転送している。1回あたりの差分情報のデータ容量は200~300MB程度だ。

火曜日に薬事ニュースを見た医師らが詳細に調べたい場合は、院内の約800台のPCから添付文書などを直接見ることができるが、その時点ですべて情報が更新されている。また、同時に閲覧できるクライアントPCの台数に制限がないように、JUS D.I.をフルライセンスで購入している。

<空薬事ニュースの表紙面ではJUS D.I.の1週間分の更新情報のポイントを要約して掲載している

薬事ニュースの表紙面ではJUS D.I.の1週間分の更新情報のポイントを要約して掲載している

「JUS D.I.は情報を毎日更新するので、週1回といわず、毎日でも情報を提供することはできる。だが、多忙ゆえに見た医師とそうでない医師の間に情報のギャップが生まれるおそれもある。かえって氾濫する情報に現場が戸惑いかねない。情報を適切にコントロールするのが薬剤科の大きな役割のひとつだ」と高畑氏は強調する。仮に薬事ニュースに掲載できなかった、緊急性の高い情報が製薬会社などから入った場合については、号外的に発信することでフォローしている。医師や看護師にとってもこの方式のほうが、重要な情報を1週間分まとめて閲覧できるので手間がかからず、特に緊急性の高い情報についても随時把握できるため、対応しやすいという。同院では、さらに新DIシステムをより使いやすく発展させていきたいと考えている。「画面の文字などを大きくしたり、薬品名の入力の際にキーボード入力できるようにしたりしたい」などの要望をまとめているところだ。改良を重ね、進化する新DIシステムを今後も同院では有効利用し、DI業務を充実させたいと考えている。


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市立砺波総合病院

病院概要
名称:
市立砺波総合病院
住所:
富山県砺波市新富町1-61
Webサイト:
http://www.city.tonami.toyama.jp/tgh/index.html
システム開発・導入:
日本ユースウェアシステム(東京・品川)
総販売元:
スズケン

※このコンテンツは、
日経メディカルオンライン「医療とIT」に掲載(2007年11月22日)された記事から転載したものです。日経BP社に転載許可をいただいております。

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